精霊と魔術

Last-modified: Wed, 11 Dec 2019 02:35:02 JST (1607d)
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魔法使い(術師)という存在

超自然の存在を感知し、取引を行う人間

 魔法使い(以下「術師」)とは、通称「精霊(後述)」と契約した者達を指す。繊細な感性と強い生命力を持つ一握りの人間のみが術師に選ばれ、かつて一神教が広まる以前は、ほとんどの術師が政を司る権力者であったと言われている。
 なお、術師の家系に生まれ十分な素質を持っていたとしても、精霊と契約できなければただの人間として一生を過ごすことになる。例えそれが賢者の子どもであったとしても、成長過程で生来の感性を潰されてしまい、いざ術師として活動しようとした際に精霊の存在を感じとれないということも珍しくはない。

生命力と魔力の取引

 精霊との契約には、自分の生命力(日本語では「精神力」あるいは「信仰心」と形容する方が正しいかもしれない)を分け与えるのが通例である。精霊は人間の生命力無しで生き延びることがままならないためである。契約にあたって、精霊側は自分の命綱となるにふさわしい人物を選び出さなければならず、人間側は自分の生命力を削るリスクを払うことになるため、両者の関係は互いに妥協の無い真剣勝負となる。
 ただし、精霊によっては別の物を代償としたり、場合によっては代償無しで契約する個体が存在する。生命力以外のものを取引して行われる契約は精霊優位の取引となりやすく(理由は後述)、基本的に人間側が拒否できない、いわば「呪い」に近い契約となる。
 ちなみに、精霊と契約した人間は最も生命力の溜まりやすい場所に痣や傷跡のようなものが浮かぶようになる。術師はこれを「契約の証」としている。

契約の個体数など

 精霊との契約は必ずしも1体でなければならないという事は無く、数体と同時に契約を交わすことも可能。ただし、契約個体数に比例して与える生命力の量が増えていくため、万が一自分の限界を超えた契約を結ぶと、生命力を精霊に食われ廃人状態になってしまう。なお、このような者達を、術師は「空になった」と形容する(日本語で言うところの「抜け殻」「荒廃」と同じニュアンスである)。一度「空になる」と元に戻ることは不可能であるため、術師としては最も恐れるべき結末である――精霊側は契約を解消し、新たな術師を探すだけでよいのだが。
 この理に則って考えると、契約個体数が多ければ多いほど術師として実力があるということになる。基本的に1体ないし2体の精霊と契約できれば魔法使いとして一人前だが、トップレベルの人間となると軽々と5体以上は契約してしまう。


「精霊」の定義

概念の具現化

 術師達が魔力を行使するために契約を結ぶ精霊――その正体は、概念を具現化したものである。
 例えば、我々が炎を見たあとで血液を見ると、「同じ色をしている」と認識する。これを「同じ色」としてまとめた瞬間、それは「赤」という概念になり、同時に「赤という概念を司る精霊」が誕生する。もちろん、精霊(概念)を生み出す行為自体は、術師でなくても容易に行える。
 つまり、精霊の数は人類が概念を生み出す限り無限であると言える。

人類に依存する存在

 精霊という存在は、概念の存在と一生を共にする。すなわち、人間がその概念を忘却した瞬間、精霊は消滅してしまう。また、精霊がどのような魔力を持つかやどのような見た目をしているかについても、契約者をはじめとした人類のイメージを強く反映したものとなる。
 設定上ありえない状況ではあるが、例えば「曼珠沙華という概念を司る精霊」がいたとして、「不吉」というイメージを持った日本人が契約したとなると、「墓場」「毒」「死」というイメージから恐ろしい魔法を発現してしまうことになるが、一方で彼岸花を「両想いの象徴」と考える朝鮮人が契約すると、さながらキューピッドのようにロマンチックな術師が誕生するだろう。
 つまり、「誰でも知っている、もしくはみんなが同じイメージを抱いているような概念」を司る精霊に関しては一定の存在を維持しやすく、「個人の主観や文化圏によって捉えられ方が異なる」概念は契約者によってその実態を大きく変化させたり、最悪消滅してしまったりすることになる。

絶対的に存在を確立する精霊達

 そういうわけで、精霊達と契約を結ぶ術師は、精霊が存在を維持するために彼らの存在を強く信じなければならない。これが「生命力を与える」という取引の実態である。
 ところがこの原則に反して、契約者からの信仰を受けなくとも、一般民衆からの信仰だけでたやすく存在を確立できる精霊が一定数存在する。色彩・自然物・感情など、「人間なら当然認識している概念」を司る精霊はこのグループに分類されるだろう。
 その中でも、主に一神教の流布をもって人類から絶大な信仰を集める精霊は極めて特別視され、歴代の契約者は「~の系譜」という特別なグルーピングをされてきた。このような精霊達と契約するためには、彼らの欲する生命力以外の何かを有していなければならず、術師側の意志で契約を結ぶことはできない。